現在、環境調査とイラストレーターとしての仕事を両立し、高知と福岡を行き来する古谷さん。まさに2地域居住という言葉がぴったりです。
「僕はもともと須崎市安和の出身で、大学進学とともに県外へ出ましたが、その後高知に戻り印刷会社へ就職しました。大学時代に九州で出会った現在のヨメさんも大学の編入学で高知へ来ていましたが、26歳の頃、ヨメさんが福岡の大学院へ進学することとなり、結婚し、自分も一緒に福岡へ行ったんです。福岡ではデザイン事務所に就職しましたが会社運が悪くて…(笑)その後、環境調査会社に入ることになりました。それが今のライフワークになっている調査の仕事の始まりです。環境調査の仕事は全国各地の山がフィールドで、高知を拠点に動いたり、福岡を拠点に調査に出かけたりしています。」
―――イラストレーターとしての仕事はどんなふうにされているのでしょうか。
「小さいころから絵を描くことが好きで、画法や操作法などは独学で学びました。頭の中のものを描く方法が鉛筆からパソコンになっただけです。今は、東京の仕事がほとんどです。イラスト・ロゴ・キャラなど、なんでも手がけますよ。最近では、環境調査の仕事を通して鳥を題材にイラストを描くようになりました。子どもたちが自然に関わるとっかかりとして、子どもの興味を刺激し手にとって読み解きやすい、絵本スタイルの環境教育本を手掛けたいなと思っています。」
―――仕事も住まいもどちらかに腰を据えていないのですか。
「高知でやっていることと、福岡でやっていること、それぞれが自分にとって大事なんです。じっとしてるのは性に合わない。落ち着かないですね。どこに行くのも苦にならないんです。」そんなフットワークの軽さを感じさせてくれた古谷さんですが、生活の場を高知に戻したいという思いもあるようです。「子どもが小学生ぐらいまでは自然の中で遊ばせてやりたいし、自然の中で育てたいです。だから、近々安和に戻ってくるつもりです。ヨメさんも安和が好きですしね。でも戻って来た時にネックになるのがヨメさんの仕事です。日本語教育の講師という仕事なので、なかなかそういった仕事が無いんじゃないかなと思います。都会に出ればそういった学校は多くあって、仕事も就きやすいと思うんですが、田舎はそういう仕事がないですから。選択肢が少ないですね。」
―――他に福岡と須崎の違いはありますか?
「福岡と須崎の違いは、逆に同じところがあまりないのでわからないですね(笑)福岡の方が人の行き来が多い場所といったイメージでしょうか。福岡は面白いし、ものを選ぶ選択肢が多いです。出張や旅行気分なのかもしれません。」高知で、福岡で、と限定せずに、いろいろな場所に根付きながらやっていきたいと話す古谷さん。 高知では地元の仕事に関わることもあるそうです。「地元須崎での仕事に関わることもしばしばあります。でも、地元に居ないことで地域の信頼を失ってしまうことも事実です。高知が拠点という気持はあるけれど、外に出ることが多く、近くにいないということが、どうせおらんき、と思われてしまい、やはり近くにいないと出来ないことも多々あるなと感じました。スピード感が大事な仕事の時は特にそう思います。」
最後に古谷さんと同じようにUターンを考えている人へのアドバイスをいただきました。「自分も移住はこれからなのですが、田舎だから、プライベートを見られることは確実です。さらけ出すことも必要なのが田舎なんだと思います。Uターンであるということはもともと根付きがあるとは思いますが、地元に溶け込むにはノリの良さや気軽に話しに入ることでしょうね。関わりを持ってくれる人がいれば田舎の人たちもありがたいと感じてくれているはずですから。」
取材:2013年4月