「今はもう立ち消えましたが、平成13年に須崎市でカワウソ研究センターを設置するという計画が持ち上がりました。当時、栃木県立博物館で非常勤の学芸嘱託員をしていた私は、その職員(社団法人が募集)に応募をしました。それが、須崎市へ来るきっかけでした。」宮城県出身で関東暮らしが長く、それまで四国すら行ったことがなかった谷地森さんは、現在NPO法人四国自然史科学研究センターのセンター長として四国の様々な生きものを調査する仕事をされています。
仕事を通して須崎市へやって来た谷地森さん。須崎での生活について聞いてみると、「須崎は交通の便がいいですね。高速道路が発達しているので四国中、行き回るのに最適です。現在、須崎市の市街地に住んでいることもあり、歩いていけるところにスーパーやコンビニ、病院など何でもありますから、生活するには十分な利便性で、暮らしやすい場所です。ただ、大きな本屋がありません(笑)。たくさんの書物の中から選びながら本を買えないという不満も実はあります。」と教えてくれました。
自然のスペシャリスト谷地森さんに、須崎の自然について尋ねると、「須崎は生きものの影(気配)が身近に感じられる場所ですね。山にはニホンリス、家の前にはタヌキ(笑)。生きものの調査をする場所としては最適な場所といえます。須崎市の南に位置する横浪半島も魅力的です。絶滅が心配されている種もいたりします。調査を通して、横浪半島にはいろんな動物がいることがわかったんです。」と、さすが生きもの博士。
「僕はタヌキが専門なんですが、以前調査していた長野県のタヌキと高知県のタヌキは違った特性を持っているように感じます。高知県のタヌキは繁殖期がほかの地域よりも長いようなんです。気候の違いによる食べ物の豊富さが表れているんだと思います。」厳しい冬の寒さが少ない土地だからこそ、多様な生きものが生息し、素晴らしい自然が残る須崎市なんですね。人も生きものも穏やかに暮らせるまち、それが須崎市なのかもしれません。最近では、小学校や中学校へ赴き、新荘川の生きものについて教えたり、理科を受け持つ教員の勉強会に講師として活躍する谷地森さん。
―――須崎の子どもたちの印象は?
「須崎の子どもたちに自然観察のイベントを実施する事が多いのですが、今の子供たちは外に出ないとか、パソコンばっかりとか、知識を持っていて賢いと言うけれど、須崎の子はそんな風には感じません。夏には学校帰りに川で遊び、帰って行く学生、外で遊ぶ子も多く、まっすぐ育っている印象を受けます。興味や関心が多い子どもの頃は、たくさんのきっかけを与えることが大事だと思います。」
これからも須崎や高知の自然の魅力を次世代に伝える伝道師として、活躍が期待されている谷地森さん。10周年を迎えたセンターの今後の活動も楽しみです。
(取材:2013年4月)