浦ノ内でユリ農家さんを営んでいるご夫婦を訪ねました。
 
外からハウスを拝見した後は、ハウスに隣接する納屋でお話を伺わせていただきました。納屋に入ると、ユリの球根達を発見!
 
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黒コンテナの中にいっぱい並べられています。
 
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今回伺ったユリ農家さんでは、今年は10月~11月にかけて球根の定植を行っているそうです。この定植の時期は各農家さんによってもバラつきがあるとのことで、出荷時期から逆算して定植日を決めていくそうです。
 
本日お話を伺ったご夫妻は、ユリ農家になられて、今年で25年目。
 
ご主人は初めは会社にお勤めをされていたそうですが、その会社が倒産するという事態に遭遇してしまいます。会社倒産後は、しばらくアルバイトをして生活していましたが、知人から「ハウス栽培をやってみたら」と勧められたのをきっかけに農業を始めることにしました。
 
農業を始めたばかりの頃は、ユリの栽培ではなく、インゲン豆(すじなしインゲン)の栽培を行っていたそうです。インゲン豆は価格変動などがあまりなく、とても安定しており、須崎市内でも栽培されている農家さんが結構います。でも、インゲン豆って作業が本当に地道なんですよ~。(まあ、こういう地道な作業が農業は求められる職種でもあると思うのですが^^;)
 
私も以前、東京の農家さんの収穫体験に伺ったことがあるのですが、採っても採ってもなくならず(これは嬉しい悲鳴と言えばそうかもしれませんね)。しかも、中腰の姿勢で収穫する為、これが結構、足腰にくるんです。
 
ご夫妻曰く、さらに大変だったのが、箱詰め作業だったとか。
 
そんな日々を過ごしていると、奥様の知人にユリ農家さんがいらっしゃるご縁で、一作終ったユリの球根を譲り受け、栽培するようになり、農家になって8年目にユリ農家に転身されたそうです。インゲン豆のような小さいものを扱うよりも、ユリを扱う方がお二人の性に合ったのか、それからずっとユリの栽培を続けていらっしゃいます。
 
野菜の栽培といっても、ユリのような花き類もあれば、トマトのような果菜類、ニラのような葉茎類、大根などの根菜類などいろんな種類があります。そういう意味では、自分がやっていて楽しい作物ってあるんですよね。新規就農をお考えの方は、この作物との相性も踏まえて、栽培する作物を考えてみることも必要かもしれません。
 
奥様にお話を伺うと、「綺麗な花を見ながら作業ができるのはすごく楽しい」と笑顔でおっしゃっていました。
 
さて、現在、国内の花の消費量はバブル景気をピークにしてどんどん減ってきているそうです。ユリも例外ではなく、やはり消費量が減ってきているそうですが、併せて、生産者さんの高齢化や後継者不足などもありどんどん生産量が減少していっているそうです。
 
須崎市でも、以前に比べてユリ農家さんの数が減り、ユリなどを含む花き生産量の県内比率は、10%ほどだとか。
 
でも、ユリって日本人にとっては昔から人を魅了してやまない花ですよね。ユリの名前も「揺れる」の古い言葉で「揺る」から由来しているそうです。
 
お話しを伺った後は、納屋から移動してハウスの中に案内していただきました。
 
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それにしても、ユリってこの世に何種類くらいあると思いますか。
 
答えは・・・
 
なんと!ユリの品種は世界に450種類以上あると言われているんです。
 
こちらの農家さんでは、今は主にオリエンタル・リリーという種類のユリを栽培しています。オリエンタル・リリーには、よく名前を聞く「カサブランカ」をはじめ、様々な品種があります。現在は、ハウスの中に「シベリア」という品種を筆頭に、3種類の品種を栽培しているそうです。
 
この「シベリア」は、カサブランカに比べて少し小ぶりの白いユリですが、冠婚葬祭や花束など様々な場面で用いられています。実は、ユリの60~70%は冠婚葬祭で使われているんだそうです。
 
ご夫妻はオリエンタル・リリーを栽培して今年で17年目だそうですが、ユリは新しい品種が毎年のように出ており、生育状況が違う為、一年一年が新人のような気持ちだそうです。
 
ところで、定植に使用しているユリの球根は主にオランダやニュージーランドから輸入されてきたものなんだとか。
 
こちらの農家さんでも、今までは主に地球の北側にあるオランダの球根を使っていました。しかし、オランダの球根が仕入れられるのはだいだい年初めのため、定植を行う時期まで冷凍保存して生育を抑えようとすると、冷凍期間が長くなり病気のリスクが高まってしまいます。
 
一方、南半球にあるニュージーランド産の球根は、初秋頃に仕入れることができるとあって、現在は、ニュージーランド産の球根をまずは定植し、その後、オランダ産の球根を定植するというように、冷凍保存を行わずにできるよう努めているんだとか。
 
こういうお話を聞いていると、農業って地域に根差した産業でありながらも、世界的な視野が求められる職業なんですね。
 
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まだ定植して日が浅いため、この日は花を見ることはできませんでしたが、12月頃には出荷時期を迎えるんだとか。またその時にお伺いさせていただこうと思います。
 
今日伺ったユリ農家さんは、お二人とも癒し系でありながら、私が伺う前までにその日の作業をしっかり終わらせるなど、とっても段取り上手な方々でした。
 
特に、自然が相手の農家さんはこの段取りの結果が露骨に作物に現れるからこそ、日々の準備や作業が如何に大切かを身を持って知っているんだと思います。
 
ご主人、奥様、お忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございました(^^)/