今回は 九石大敷組合 を取材!
ブランドマネージャーの【笹岡 祐貴さん】にお話を伺いました!
 
●「九石大敷組合」はどんな企業?
九石大敷組合は1952年(昭和27年)に創業。須崎の沖で定置網漁をしている企業です。社名にも入っている『大敷』は漁法の名前で定置網漁のことを指しています。
 
●どんな仕事をしているの?
定置網漁は都道府県や漁場によってやり方が変わるそうですが、九石大敷組合の場合は10t船が2隻、小さい船外機(ボート)が2隻の合計4隻で漁が行われています。
漁で獲れた魚は須崎の魚市場に出荷され、須崎市内の鮮魚店や高知県内で消費されているほか、九石大敷組合で鮮魚の販売事業も行っているので、県外の個人宅はもちろん、魚に拘った県外の飲食店にも発送されています。

 
●漁協職員でありながらも家業に従事
今回取材をさせていただいた笹岡祐貴さんは、Uターン後に須崎釣漁協同組合に入社。九石大敷組合は家業になるそうです。入社当時は組合に所属している方の魚の販売(競り)をはじめ、九石大敷組合で獲れた魚の販売をしていました。
様々な人と関わっていく中で、色々な意見を漁師や魚屋から聞いたり、全国的な水産業の流れを見ているうちに課題が見えて来たそうです。
「それぞれに色んな思いがあるのにみんな形にできていないのであれば、販売事業部を立ち上げて九石大敷組合の事業で形を作っていきたいと思ったのが始まりでした。その話が出るまでは2年ほど漁協に所属をしていて、勤務をしている中でも明確な課題が見えてきたということもあったので、事業を立ち上げました。高知県内でも須崎市の魚にブランド力があるのは、魚を獲ってきた漁師はもちろん、販売する鮮魚店や卸業者の力があったからこそ、ブランドとしても一定の地位があります。ですが、飲食店の縮小や交通の便の発達により、いろいろな魚が地域から入ってくることによって地元の魚が埋もれてしまい、衰退してしまっていると感じている人も居ます。再起をしていくきっかけになればとも思い、九石大敷組合の販売事業を開始し、現在は販売事業も徐々に広がり始めたので、次のステップに行こうと考えています。」

 
──魚の販売事業を始めたころはどうでしたか?

「仕組みを構築するところはゼロからのスタートです。自分一人しかできないので、最初に誘導するときはどうしても時間がかかってしまいました。魚の販売は今でこそ漁師も一緒にできていますが、最初はどんな魚を入れたらいいのかも分からない、梱包方法も分からないと、分からないことだらけでした。また、漁師だけでなく事務をしている人も納品書を作ることからスタートでした。何もかもが初めてのことでしたが、ちょっとずつ改善を重ねて現在の形になっています。」
 
●須崎の魚市場は競りが9:00!
豊洲市場の競りは夜中3時からと朝早くに行われていますが、須崎の魚市場は9:00からと県内でも遅いのが特徴的。
須崎の魚市場は昔から地産地消に強い市場だったそうです。現代では交通網も発達し、出荷する仲卸業者も買い付けを終えて荷造りして昼に出てもその日中には近畿圏まで持っていくことができます。そのため、その日に行って帰って来られるので、朝遅くても問題がなかったというのが遅い理由の一つだそうです。

 
また、須崎の魚市場には須崎市外の漁師も持ってきている人がいるそうです。その理由について、
「須崎の市場には魚商人の数も多く、活気があるからこそ須崎の市場に持ってくると利益も出る。それくらいの購買力がこの市場にあるからなんです。」とお話してくれました。
 
●朝早くから始まる漁師の仕事
九石大敷組合の漁師の1日は朝早くから始まります。
4:30に港から出港し、漁場まで約40分ほどかけて向かいます。
九石大敷組合の漁場は須崎湾に2か所あり、1か所ずつ網を上げていきます。
網を上げる作業は3~4時間ほどで終了し、8:30頃に須崎港まで戻ってきます。

 
水揚げを終えたあとは県外へ発送する魚の準備をみんなで行います。
その後は再び船で作業場まで向かい大敷網を直したり、翌日に漁で使う氷やその他の準備を行い、14:00くらいには1日の仕事が終了しているとのことです。
 
●全国的にトップレベルの若い漁師が働いています!
現在、九石大敷組合では事務員4名・漁師14名の計18名の方が従事されています。
インドネシアから特定技能実習生の受け入れもされていて、20代半ばの方が多いそうです。日本人漁師の平均年齢が33~35歳とのことですので、全国的にトップレベルの若い漁師が九石大敷組合で従事されているというから驚きです!
日本人漁師は地元出身の人が多いそうですが、中には土佐市から通われている方も居るそうです。
 
──職場の雰囲気や日本人と外国人同士のコミュニケーションはどうなのでしょうか?
「雰囲気はみんな仲良く仕事をしています。インドネシア人は日本語レベルに差はあるものの、日本人とコミュニケーションもよく取れていますし、日本人も優しく接していますよ。うちで働いているインドネシア人の中には定置網漁で就業をしたことがある人もいるので、お互いが教えあっている場面も見られます。」

 
九石大敷組合は高知県が開催している【漁業就業フェア】などにも積極的に参加をされている企業の一つでもあります。
──県外からの就業者もいますか?
「以前は県外から就業してくれた方も居ました。暮らしには慣れていたようですが、関わる人が圧倒的に限られるのも漁業の特性のため、その方は地元に帰ってしまいました。地元出身の人であれば、友人や知人の広がりはありますが、県外から来ると関わる人が限られてしまうので、その部分が解消できていればまた違っていたのかなと思います。コミュニケーション能力が高く、いろいろなところに入るのが得意な方はいいですが、難しく感じる方もいらっしゃるので、そういった部分は今後の課題ですね。そこが解消されれば移住にも繋がってくれると思います。」
 
●漁師は『個人』の時代から『サラリーマン漁師』の時代へ
──個人で新規就業するのはやはり難しいですか?
「個人で船を買って漁場に行って一人で漁をするというのは、私から見ても相当ハードルが高いです。経営として成り立つということは大前提ですし、仕事場が海なので獲れるポイントなども知っておく必要があります。また、漁師の仕事は自然に左右されるのでギャンブルにも近く、経費もそれなりにかかるため、賄いきれるくらいの収入を上げないことには続けていくことはできません。しかし、補助金も活用して新規で漁師を始めた方ももちろん居ますが、コロナ禍も重なり中には上手く行かなかった方もいます。また、相場に左右される仕事でもあるので、いい魚を獲っても販売力が無いとそこで淘汰されてしまうくらい厳しい世界です。」
 
──では、漁師になるためにはどうしたらいいでしょうか?
「漁師は個人事業主というイメージが強い方も多いかと思いますが、定置網漁の漁師は『サラリーマン漁師』ともいわれています。うちも『組合』と書いてはいますが、組合員になるというよりかはその会社に就職して漁師をするというイメージですね。会社が販売なり漁師の仕事+αをやっているからこそ新しい従業員を雇えるという構造ができています。新規で漁師になりたいと考えている人は、まず興味のある会社で所属をしてみるというところがポイントかもしれません。高知県内では定置網以外にもマグロやカツオなどいろんな漁法をやっている会社があります。現在、漁師になりたい人の大半がこの『サラリーマン漁師』をされている人が多いと思います。」
 
●ほかでは味わうことのできない非日常を体感できる仕事
──この仕事に向いている人ってどんな人だと思いますか?
「サラリーマン漁師は仕事場が海なだけで、普通の仕事とあまり変わりはないと思います。漁師の仕事って、カラダ全身を使うので体力的にキツイ部分ももちろんありますが、仕事をしていると自然に体もできてきますし、規則正しい生活習慣を送ることができるので健康にも繋がるんですよね。休みは一般的な土日休みではありませんが、休みはもちろん自由に使えますし、朝が早い仕事なので、昼以降の時間は有意義に使えますよ!」
 
──漁師の仕事の魅力ってどんなところですか?

「他の仕事に無い『アドレナリン』を感じることだと私は思っています。漁場に行ったときっていつもたくさんの魚が入っているというわけでもないんですよ。それが大漁の日になると、水面から魚が沸いて出てくるような動きをしていたり、渦が巻いていたり、時には大きいマグロがかかっていたりと、非現実・非日常が他の人よりは凄く多いところが魅力ですね。そういうのに触れられる仕事ってあまりないじゃないですか。毎日が違う景色、四季折々の海の顔を見られる、冬場だと100羽以上の鳥が空を飛んでいたりと本当に非日常の光景ばかりなんです。もちろん、毎日仕事をしていると当たり前の光景にはなってくるかもしれませんが、サメが入っていたり、かわいいイルカを見ることができたりと少しずつ違う景色を見られるので、そこを見つけられる人は楽しめると思いますよ!」
 
──女性でも働けますか?
「高知県内では定置網漁に従事している女性の方はいらっしゃいます。こちらにも女性からの問合せがありましたが、『トイレ問題』があったんですよね。その方は室戸で就業されたそうですが、就業先は漁船にトイレを備え付けたそうです。女性の就業者は少しずつ増えてはいるものの、現状は男性がメインの仕事なので女性が半数以上になるという未来はまだ難しいかもしれませんね。」
 
●『漁師』という仕事に感じる魅力

──この仕事の「やりがい」はどんなところですか?
「私自身は漁師ではありませんが、漁師が一生懸命働いている姿が1つのストーリーのように頭に浮かぶんです。漁師は毎日当たり前のように仕事をしていると思いますが、その姿が本当に好きで漁師という仕事には魅力を感じます。うちで販売している魚を買ってくれたお客様の声は漁師に共有していて、良い意見・悪い意見も含めて消費者の顔が見えるというのは凄く大事だと思っていますし、自分が獲った魚を美味しいと言って喜んでくれることが漁師にとってもやりがいになっています。『美味しい』といってもらえるように魚に価値をつけていくのが自分の仕事でもあります。」
 
──この仕事「大変なところ」はどんなところですか?
「仕組み作りやルール作りですね。今までやっていたことを変えていくところが凄く難しいです。上だけでなく他のところにも承諾を得なければならない場面も多くあるため、そこに対して説得をしていくところも大変ですし、事業として発展していくスピードも遅くなるため苦労する部分でもあります。しかし、私が改革をし始めてからは漁協の運営の仕方や働き方はもちろん、九石大敷組合は経営の形も変わってきました。振り返ってみると私自身が販売を広げるために出会った様々なジャンルの経営者の方だったり、就業フェアに参加して出会った人、色々なことを通じて出会った人など、私たちが次に何かをするときにすごくサポートしてくれるんですよね。やってきたことが少しずつ芽を出しているのを実感しています。」
 
●『日本一有名な漁師』を目指して
──九石大敷組合の目指すところを教えてください。
「一つ明確にある目標は『日本一有名な漁師にする』ということです。もっと大きく言うと、須崎市で水産業に携わる人たちが将来事業を繋いでいけるような構造を作っていきたいですね。須崎市の魚ということで販売が増えたり、生活が豊かになるようにするためには、須崎市の魚の認知度を上げることが第一なので、構造ができれば参入しているだけで売れる仕組みができるんじゃないかと思っています。地域高齢化も進んではいますが、SNSを活用するなど様々な販売ルートを構築していく人を徐々に増やしていくのも私の役割の一つだと思っています。」
 
●愉快な人が多い街
──笹岡さんが思う『須崎の良さ』ってどんなところですか?
「一度は県外に出た身で、自分が住み慣れた街というのもあるんですが、やはり落ち着きますね。買い物も不自由しませんし、生活に困ることはありません。高知市へのアクセスもいいです。遊ぶ場所は少ないですが子ども連れで行けるところはいろいろとあるので、今は不自由なく須崎市で生活できています。人でいうと、地域性はあると思いますが愉快な人が多いイメージですね。良いも悪いももちろんありますが、平均値というのがあまりないからこその面白さがあると思います。食に関しては、やはり須崎市は魚も盛んですし、美味しい店がたくさんあるというところには自信が持てますね。」
 
●須崎の魚の魅力や漁師の仕事の楽しさを知ってほしい
──最後にメッセージをお願いします!

「Instagramはもちろん、TikTokなどでもショート動画メインで情報発信をしています。九石大敷組合で働いているメンバーは愉快な人も多く、他では出会えないような人材の集まりなので、それを念頭に置いていただきながら見ていただくともっと楽しめると思います。漁業は3K(きつい・汚い・危険)と言われている仕事ですが、全然違います。魚を傷つけないよう丁寧に捕獲することや仕分けをすることなど、美味しい魚を消費者に届けようと思い一生懸命に仕事をしているからこそ汚れるのであって、その姿はかっこよく誇れるものだと思います。そういった魅力が詰まった会社が九石大敷組合です。私たちが発信している動画を入り口に、須崎の魚の魅力や漁師の仕事の楽しさを知っていただけると嬉しいです。」
 
お忙しいなか、ご協力いただきありがとうございました!
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