今回は【ジビエ浦ノ内企業組合】を取材!
事務所長の 宮本 良彦(みやもと よしひこ)さんと地域おこし協力隊の 松本 碧(まつもと あおい)さんにお話を伺いました!
 
●『ジビエ浦ノ内企業組合』とは?
2019年4月に須崎市内の猟友会メンバー6名により発足されました。
猟友会には浦ノ内地区の元気な高齢者の方々も所属しており、自身の仕事と兼業しながら地域を守って来られました。
しかし、猟師の方々も平均年齢が70歳を超え、猟師を継承する担い手不足も問題となっており、「一緒に地域を守るために!」と勧誘にも取り組んできたそうですが、次の担い手となる若者にとっては害獣を駆除された後の利用が確立されていない『狩猟』という世界に入るのに抵抗感を持たれていたようです。
 
こうした中、近年の飲食業界では注目度が高くなっていたジビエ肉。
イノシシ肉は高たんぱく・低カロリーのヘルシーな食材としても認知もされてきており、「捕獲して廃棄するのはもったいない。駆除したイノシシ肉を須崎市の新たな特産品にできないか?」と、地域を守りたいという想いのもと、ジビエの可能性を模索、先進地での加工処理施設の視察などを通して拠点づくりの準備が始められました。
イノシシの加工を行う解体処理施設は、県や市の補助金を受けて整備され、2020年5月より本格的な稼働が始まりました。
 

 
●須崎市内の狩猟事情
現在、須崎市には【須崎(新荘・安和・上分)】【多ノ郷】【吾桑】【浦ノ内】と4つの猟友会があり、猟師はそれぞれの地区に所属し狩猟を行っています。
それぞれの猟友会には境界があり、有害鳥獣駆除などの依頼が無い限りは境界を越えての狩猟を行わないのが決まりだそうです。
狩猟期間(県が許可を出す期間)に入ったときは、地域を跨いでの狩猟も解禁されるそうですが、事前に断りを入れるというのが昔ながらのルールとして今もなお残っています。
 
●ジビエ浦ノ内企業組合に運ばれてくるイノシシ
解体処理施設ができるまでは、狩猟をしたら自分たちで消費をすることが多かったイノシシジビエ。施設完成後は、組合の理事が持ってくるイノシシや須崎市内で獲れたものだけでなく、越知町・佐川町・四万十町・土佐市で狩猟されたイノシシも入ってくるそうで、年間300頭ほどがこの処理施設に運ばれています。
持ち込むイノシシには企業組合が定めている条件があり、『とめ挿し・放血してから2時間以内』『死んでいたなどの明らかに異常な個体でないもの』『一部時期を除いて25kg以上の個体』などの条件をクリアした個体が持ち込まれています。
 

 
●浦ノ内のイノシシの特徴
──年中持ち込まれているイノシシですが、違いなどはあるのでしょうか?
宮本「夏と冬の違いは『脂』です。夏場は肉質的にも痩せていますが冬場は肥えた個体が多いので、美味しいのは圧倒的に冬場のものです。イノシシ肉といえば『脂』と言われているほどなので、白のコントラストが重要になります。なので、夏場は『赤身』が多いので、切り落としで販売をすることが多くなります。」
 

 
──イノシシ肉はどうしても【臭い】というイメージがありますがその理由は?
宮本「臭いと言われるのは解体処理の違いもあるかもしれません。解体に時間がかかってくると臭くなる可能性も高いですし、血抜きが上手くできていないのも臭さの原因にもなります。施設に持ってきてくれる個体のほとんどは綺麗に血抜きもしてありますし、施設に持ってきてからする方も居るので、臭さはあまり感じないと思います。ただ、時間が経ちすぎて個体に血が回って使えない肉になっているものもたまにあるので、その場合は悪い部分をトリミングして使える部分を商品として販売し、ロスを無くすよう有効に活用をしています。」
 
●狩猟者も『高齢化』に
狩猟している方々は趣味の一つとして楽しんでいる人が多く、また、イノシシ肉は『食資源』として地域の狩猟者の方が宴会に使って食べるなど、地域の食文化の一つになっていました。
最盛期には狩猟免許を持っている人が須崎市だけでも700人くらいは居たそうですが、現在は85名ほどと激減しています。
近年では狩猟者の高齢化も進み、70代~80代が多数を占め、20代~30代の新規参入で若返りも図っているようですが、40代~60代の世代がほとんど居ないそうです。
狩猟には【猟銃】と【わな猟】の2種類がありますが、猟銃は金銭面の負担も多いそうで、わな猟に転身した人も多くいるとのこと。
現在、免許を持っている若い世代の多くは会社員や農家など兼業でされている方がほとんどで、中には女性の狩猟者もいるそうですが、人数はあまり多くないそうです。
 
──狩猟免許を取るのは難しいんでしょうか?
宮本「狩猟免許は『猟銃』と『わな猟』がありますが、免許の取得には講習会と試験の2日間で取れるので、資格を取るハードルはあまり高くありません。『猟銃』については実技試験もあり、狩猟してはいけない鳥獣の種類なども覚える必要があるため『わな猟』より難しくはなっています。ただ、講習会ではポイントをしっかりと教えてくれるので、『わな猟』は受かる人が多いですよ。私や松本さんも企業組合に来てから免許を取得しています。」
 

 
●地域おこし協力隊としての任務内容
松本さんは2023年に地域おこし協力隊としてジビエ浦ノ内企業組合に着任し、活動をされています。
──ここではどのような仕事をされていますか?
松本「組合の事業全般をしています。イノシシが入ってきたら解体作業もしますし、商品の納品や県外のイベントでのPR活動も行うほか、関東(主に東京)の営業先訪問などもしています。」
 
──どうしてジビエの協力隊になろうと思ったんですか?
松本「もともと狩猟系のことがやりたかったというのがあります。ここに来る前は東京でOLをしていましたが、環境を変えたくって。アウトドアも好きで、高知にも遊びに来たこともあったので、興味のある『狩猟系』と『高知』で探していたらここの募集を見つけてすぐに応募しました。高知には1回だけしか訪れたことはありませんでしたが、凄く気になっていた場所だったので、協力隊の募集も高知でしか探していませんでした。ここに決まっていなくても高知には来ていたと思います(笑)」
 
●高知暮らし満喫中!
──須崎に来て2年ですが、須崎での暮らしはどうですか?
松本「お店なんかも一通り揃っていて暮らしやすいですね。須崎の街中に住んでいるのでご近所付き合いなどはあまりありませんが、浦ノ内のおじいちゃんおばあちゃんが凄く優しくしてくれます。いろんなものを『これ食べや~!』と言って持ってきてくれるので、食には困りません(笑)」
 
──田舎暮らしへの入りづらさはありましたか?
松本「田舎コミュニティへの入りづらさはありませんでした。というか、何も考えずに入って行っていましたね(笑) 浦ノ内が当たりだったということもあるかもしれませんが、みんな本当に優しい人たちで。関係が築きにくい場所ももちろんあるとは思いますが、浦ノ内の人たちが優しくて、私にとってはラッキーでした。」
 
──休日はどんな過ごし方をしていますか?
松本「休日はほとんどどこかに出かけています。高知県の市町村はほぼ行きました。車に乗って出かけることも多いですが、中型バイクにも乗っているので、吾北から本山・大豊町へ抜けるのが好きでよく走っています。高知で暮らすことを思い切り楽しんでいます!」
 
──協力隊の任務が終了した後はどんなことがしたいですか?
松本「須崎市か高知県内のどこかの市町村には居たいので、民間企業、公務員問わず視野に入れ、アンテナを張っています。」
宮本「松本さんは狩猟から解体、解体から販売まで出来るスーパーガールなんです!ジビエ浦ノ内で働き続けてほしいし、何なら平日は公務員、土日祝日は狩猟ガール、なんて二刀流でバリバリやって欲しいですね!もちろん、須崎市にずっと居てほしい人材です。決めるのは本人だけど…!笑」
 
●みんなで協力し合う職場
──お二人が思うこの仕事の楽しさややりがい、大変だと感じるところはどんなところでしょうか?
松本「この仕事の楽しさは人が良いし、居心地もすごくいいです。大変なところと言えば、イノシシ相手なので重いし臭いもあるし、ダニも怖いし…いろいろ大変です。その辺りは気を付けてやってはいるものの、怖さはまだあります。」
宮本「僕自身は事業所運営と特に販売促進の人員として入ったので、解体は後の方で教えてもらいました。販路開拓をしないとどうしようもない状況で、最初のうちはイベント出店したりDMを送信したり、細かいことをひたすら続けて取引先を探していたのでそこが大変でしたね。それと同時に、協力隊の勤怠管理や日常の作業管理、施設管理などなど…。基本的には冷凍商材(肉)が多かったので、売れそうな商品を協力隊の二人に聞きながら『売れない物はきっぱりやめる』とか、トライアンドエラーでやっていました。協力隊の二人も【販路開拓】と【解体】の得意分野がうまく分かれてくれていたのもあって、数字もトントンと上がっていくことができました。」
 
●【鮮度はピカイチ!】な浦ノ内のイノシシジビエ
浦ノ内のイノシシジビエの魅力は、ずばり【鮮度】!!
早いものは10~15分で血抜きされ、解体処理をされるということで、その速さにも驚きました!
宮本「組合では少しでも鮮度が落ちたものは一軍からどんどん下に落として行くことにしています。その判断もいい評判に繋がっているんだと思います。それができるのは、一軍から落としていった物の販路を協力隊の二人が広げていってくれていたので、商品もそれぞれランクに分けて販売することもできています。自分たちは切った感覚で良しあしが分かるようになっていますが、迷ったときは必ず複数人の目で見て判断するようにしています。」
 

 
──ジビエ浦ノ内企業組合が特にこだわっている部分を教えてください!
宮本「イノシシジビエの管理をしっかりしているところです。今まで廃棄していたような部分にも行先が決まっているのもその一つだと思っています。また、赤と白の綺麗なコントラストがイノシシ肉のイメージだと思われていますが、白が減っても赤が減っても鮮度の良さは変わりません。処理が早ければ早いほどイノシシ肉は美味しいんです。」
 
●様々なニーズに合わせた『イノシシジビエ』が購入可能!
──組合で処理されたイノシシジビエが買える場所を教えてください!
宮本「現在はジビエ浦ノ内企業組合の事務所で購入できるほか、須崎市内だと『とさっこ広場』、高知市内では『とさのさと』でも販売をしています。『とさのさと』では梼原・嶺北地域と売り場をシェアして販売していて、梼原はブロック肉メイン、嶺北地域は冬場のみの販売になっていますが、昔ながらの切り方をされた肉が並んでいます。須崎から出すものはスライスやカレー用などニーズに合わせた商品を出していますが、松本さんがブロック肉でもいけそうだと判断をしてくれた時はブロック肉で販売をすることもあります。見かけた再は須崎のイノシシジビエを食べてほしいですね。」
 

 
●じつは何の料理にもできる!!イノシシジビエ!!
ジビエ肉はバーベキューや煮込み料理等で使われているイメージが多いお肉ですよね?
そこでイノシシジビエの美味しい食べ方について教えてもらいました!
宮本「料理はそこまで難しくなくて、好きな料理の肉をイノシシに変えるだけでいいんですよ!自分が好きなソースを使って食べるのもいいですし、マスタードやスパイスなどを使って調理するのも美味しいんです。」
 

 
──イノシシ肉の独特の臭さはどうすればいいでしょうか?
宮本「イノシシを焼いているときに出てくる『ドリップ』が獣臭の原因なんです。それを綺麗に処理しながら調理をすればジビエ肉が苦手な人でも美味しく感じることができると思います。僕自身、イノシシの肉を食べ始めてから鶏や豚の肉の臭いが気になり始めたので、『ドリップ』の処理は大切だと思います。」
 
最後に
──ジビエ浦ノ内企業組合のPRをお願いします!
宮本「あったらいいよね!というくらいにジビエの格が上がってきているような手応えを感じています。狩猟者が獲って組合まで持ってきたくれたイノシシは買い取り、それが狩猟者さんの生活の足しに少しでもなってくれたらという想いでジビエ浦ノ内は運営を開始しているので、自分たちだけで食べていた肉を商品にして、みんなに食べてもらえる食資源の一つになればいいなと思っています。須崎は魚の街。養殖の魚はもちろん定置網で獲れる魚や、アジやメジカの新子には勝てるとは思っていませんが、うちのイノシシジビエも鮮度には本当に自身があるので、時々食べてくれたら嬉しいです。」
 
お忙しいなかご対応いただきありがとうございました!
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