※現在は営業を終了しています。
今回はペットと一緒に泊まれる素泊まり宿【どうぶつすどまりBOOK(ブック)】を取材させていただきました!
(ガラスのイラストは季節によって変更されています)
●どうぶつすどまりBOOKってどういう施設?
須崎駅からほど近い場所にあり、2018年4月22日オープンした素泊まり宿です。3階建ての空き家を利用したこの宿は、1階と2階がペットと泊まれる宿泊施設、3階を「老猫ホーム」として運営されており、宿泊施設と老猫ホームが一緒になった全国的にもとても珍しい場所です。
利用者の約4割がなんと外国の旅行者や外国人お遍路さんとのこと!他には、ペットと一緒に泊まりたい方、ネットで連絡を取れるのがいいと思っている大学生が多いそうです。
●きっかけは『一人のおじいさん』
【宿】と【老猫ホーム】が一緒になっている「どうぶつすどまりBOOK」。
一緒になったきっかけは、保健所の方から紹介された『一人のおじいさん』だったそうです。
「この施設を作る前に、飼い主さんの家に行ってペットのお世話をする【ペットヘルパー&うさぎケア つむぎ】をやっていたんです。保健所に用事があって行ったときに、担当者から一人のおじいさんを紹介されました。話を聞くと、3年前くらいからずっと『現在5匹の猫の世話をしている。自分が亡くなったときにこの猫たちがどうなるかがとても心配で夜も眠れないときがある。』と相談をしていたそうです。私自身も【ペットホスピス】を作るにあたり相談をしていたので、それを覚えていた担当者が私に話をしてくれました。私自身もその話をされるまで「猫の施設を作る」という考えはなく、犬だけを考えていたんです。猫は最期までトイレも一人で行こうとしますし、立てなくなることもそんなにない、飼い主が最期までお世話できると思っていました。しかし、猫のほうが長く生きて最期まで看られないかもしれないという心配があるということは、相談されるまで全く想像ができませんでした。おじいさんが困っていたので『自分ができることはなんだろう』と考え、施設を作ろうと決めました。ペット可の物件をいろいろな場所で探していたら、暮らすさきさんのHPでこの物件を見つけ、暮らすさきさんを通じて家主の方とも話をしてもらい許可もいただいたので、物件を借りて3階を【老猫ホーム】として使うことにしました。3階の活用方法は決まったのですが、1階と2階をどう利用しようか考えたとき、この辺りに「気軽に泊まれる」という場所がその時はなく、20~30代、あとは外国の方にも気軽に泊まれる場所があるといいなと思ったのと、私自身がペット関係の仕事をしていて、ペットと一緒に旅行をしたいという人がいることも知っていたので、そういう方も泊まれるような場所にしたいと思い【宿】と【老猫ホーム】を一緒にしました。この施設ができたことをおじいさんに報告すると、『何かあったときには相談する場所もできたし、ここができてすごく安心した。』と喜んでいただきました。」
●ペットの「保護施設」ではなく「老猫ホーム」です。
一人のおじいさんがきっかけでできた【老猫ホーム】ですが、【保護施設】ではありません。中には、混乱されてご連絡をしてくる方もいるとのことですが、その方にはどういう状況なのかを把握するために、お話を聞きアドバイス等もされているそうです。
実際に話を聞いてみると、「1~2日預かってほしい」「3か月だけ預かってほしい」ということだったケースもあるとのこと。そういった場合は訪問でペットのお世話をする【ペットシッター】を提案したりもしているそうですが、訪問で世話をするには「信頼がないとなかなか難しいですね。」と武田さん。
実際、預かり施設のシステムはどのようなものか聞いてみました!
「飼い主さんから問合せをいただいた際に詳しい話を伺い、この預かり施設ではケア代として毎月料金をいただくことをしっかりとご説明させていただいてます。費用としては月4万円(税抜)が基本料金ですが、病院へ連れていく際は別途シッター代が発生、病院代や薬代も飼い主さんにお支払いしていただくようになるという説明もしています。老猫になると、病気が出てくる子もいるんですが、この施設は病気を持っている子も預かることができるので、どうしようか考えている方は一度問合せをしていただきたいです。」
預かり施設についてのお問合せは高知県全体からあるそうで、この預かり施設には現在2匹の猫が入所しています。
のびのびとストレスなく暮らしてもらうには5匹が限度だそうです。この2匹はもともと別の飼い主さんの元で暮らしていたそうですが、とても仲がいいそうなので一緒に過ごしているとお話をしてくれました。
2匹は老猫ではないのですが、飼い主さんの強い希望により入所しているとのこと。
武田さん自身も、相談された際はびっくりされたそうです。
●苦労したのはやはり「物件探し」
施設を作るにあたり、苦労したことを聞いてみると、
「ペット可の物件を探すことが大変でした。津野町や須崎市内の不動産屋でも物件を探していたんですが、どこにもペット可の物件がなくて。暮らすさきさんに相談した時にやっとペット可の大きな一軒家を見つけました。大家さん自身も猫を飼っていたということもあり【老猫ホーム】を運営したいという話をした際もびっくりされましたが、ご承諾いただきました。他には、やはり資金面ですね。こんなに早く施設が作れるとは思ってなくて、手持ちにすごくお金があったわけでもないので…。資金を募るにも全部自分でやるのは無理があるということが分かり、人気ブロガーのイケダハヤトさんに相談したところ、ご支援いただきました。それ以外にも、クラウドファンディングを活用したり、改装のための融資をいただいたりと、たくさんの方に助けられました。」
施設内の改装も武田さんやご友人と一緒にされたそうで、取材にお伺いしたときはちょうど追加の改装が終わったあとでした。
(新たに導入されたベッド)
「改装も一人だったら本当に大変でした。壁紙も貼るのも全然できなかったんですが、地域の人が手伝ってくださり、本当にありがたかったです!他にも、もう使わなくなったものを寄付していただいたりしました。ありがとうございました。」
(高知のあれこれを紹介した壁面装飾)
(客室の襖には、部屋の名前にもなっている猫が描かれています)
(1階にある共同キッチン)
●「どうぶつすどまりBOOK」のことをもっと伝えていきたい
たくさんの方の協力があり、オープンした「どうぶつすどまりBOOK」。今度どのような場所にしていきたいか聞いてみました。
「私自身、ここを続けていくことが大事だと思っています。外国の方から『また行くから!』と言われたりもするので、たくさんの人にこの場所を知ってもらいたいですね。お遍路さんも多く泊まられるので、私自身も広報を兼ねて徳島の札所に行ったり、実際に自分でも歩いてみて、聞かれたときにはどんな感じの道のりなのかをお伝えできるようにしています。老猫ホームについても、飼い主さんと最期まで一緒に暮らせることが一番だとは思います。しかし、現実にはさまざまな理由からどうしても難しいという方がいることも知っているので、困った人たちが相談できる場所にもなっていけたらいいなと思います。今は口コミで少しずつ広まってきているので、今後はパンフレット等も作成し、ここがどういう場所なのかをもっと伝えていければいいなと思っています。他にもペット教室なんかも小さくやっていきたいですね。」
●動物看護師→高知移住→須崎へ
武田さんは2016年に東京から先ず四万十町へ移住をされてきました。以前は東京で動物看護師として働かれており、須崎に来てからは職を生かして専門学校の講師としても働かれています。動物看護師になった理由についても聞いてみました。
「小さいころから色々な動物と触れ合う機会は多かったんですが、『動物が好きだから』という理由ではなくて…(笑)11歳の時に自分が“セクシャルマイノリティ”ということに気づいてしまったんです。『結婚できない、どうやって生きていこう…。手に職をつけなきゃ!』とずっと考えていて、13歳の時にテレビでトリマーの仕事を見て最初はトリマーを目指していました。19歳の時に母親にカミングアウトしたんですが、それまで母親は『どうして動物がそんなに好きなのに獣医師じゃないんだろう。どうしてトリマーなんだろう。』とずっと疑問に思っていたみたいです。「どうしてもトリマーになりたいなら、動物看護師になるのはどうだろうか。トリマーと両方勉強をすると選択肢が広がるのでは?」とのアドバイスから、両方を学べる専門学校へ進学しました。実際、自分自身に合っているなと思っているので、なってよかったなと思っています。」
都内で働いていた際、これからのペット介護について勉強会にも参加をしていた武田さん。ちょうどその時に引っ越しも考えていたそうで、勉強会で言われた「私たちがやっていることを地方に広めてくれたらいいな」という言葉で、地方への引っ越しも視野に入れ始めたそうです。
「どこに行こうか考えていたら、本山町に友人が定住しました。祖父母が愛媛県にいるので四国自体には興味があったんですが、高知は全くの未知で(笑)友人宅の近くになんとイケダハヤトさんも住んでいて『なんで彼もそこに移住したんだろう!』とすごく興味が沸いて高知に行きました。ゲストハウスに泊まりながら、高知県庁に行き動物の殺処分数の話も伺ったりしていて、『私も何か手伝えることがあるかもしれない。とりあえず高知に行こう!』と思い、高知に行くことを決めました。…なんですが、いろいろありまして住む場所がなくなってしまったんです(笑)どうしよう…と思っていたところに四万十町のゲストハウスの手伝いに誘われて。下見に行ってみたら四万十川もきれいだったし、共に暮らすウサギたちも喜ぶかなと思い四万十町のゲストハウスで働き始めました。その後、須崎にあるペットビジネス専門学校にも『何かお役に立てることがあれば』とお話をさせていただいていたところ、「学校の先生をやりませんか」とオファーをいただき、働き始めました。最初は四万十町から須崎市まで通っていたんですが、距離もあるし夜道を帰るのがとても大変で…。冬は特に道が怖かったということもあり、2017年4月に須崎へ来ました。」
●自分にとって最低限が揃っているので、須崎は住みやすい!
須崎の良さや魅力についても伺ってみました!
「私、城山公園から見る景色がすごく好きで、外国人の宿泊者が来たときも一緒に行くんです。外国人にとって、海があって山があるというのはとても特別みたいで、連れて行くとすごく喜ばれます。私自身も都会ではない雰囲気があって、それがすごく好きです。あとは、必要最低限のものが揃うというのがすごくありがたいですね!四万十町で暮らしているときは19時を過ぎるとお店も閉まるので、コンビニやファミレスに行くにも大変でした(笑)四万十は大好きですし、四万十の暮らしが合っているひともいるとは思いますが、少し街の雰囲気があるほうが安心するみたいです。須崎は高知市内や四万十町に行くにも同じくらいの時間で行けるので、程よい距離だなと感じています。四万十町にいるときは、動物病院に行くにも宇和島まで行かないといけなかったというのも悩みでした。須崎市は自分にとって最低限が揃っているので住みやすいです!」
●最後に、移住を考えている方へメッセージ
「家族がいるとなかなか難しいかもしれませんが、単身であればとりあえず行っちゃうっていうのもありだと思います。自分に貯金がなくても、意外に住んでみると細かい仕事があったり、『こういう感じで来ました!』って言うと色んな人が助けてくれます。移住に迷う方はその土地に行ってキーパーソンの方と仲良くなると意外と何とかなったりします(笑)須崎であれば暮らすさきさんに相談することもできますし。家族がいる人であれば、ひとりだけ住んでみて様子を見てみるというのも一つの選択ではないでしょうか。たくさんの方とお話してみて、自分が納得できる場所で楽しく暮らしてくださいね!いつかお目にかかりましょう!!」
お忙しい中ご対応いただき、ありがとうございました!