今回は 株式会社 山崎技研 を取材!
総務部 今井博之さん にお話を伺いました!

 
●【株式会社 山崎技研】ってどういう会社?
昭和23年(1948年)に『山崎内燃機関研究所』という名前で設立されました。
当初はオートバイメーカー。創業者はものづくり大好き人間でエンジンに関する特許を次々と取得。この頃の特許庁の出願簿には、本田宗一郎氏と山崎圭次氏の名前が順番に連なるほど、豊富なアイデアを持ち合わせていたそうです。
しかし、当時はアイデアを実現する精度が高く使い勝手の良い工作機械が世の中にあまり無かったということもあり、機械好きの山崎圭次氏は新たな事業へとシフトすることに。
昭和40年に現在の株式会社山崎技研へと発展させ、フライス盤を事業の柱とした工作機械の会社として広く知られるようになりました。
山崎技研では、工作機械の中の「フライス盤」というものを製造。工作機械自体は大きく分けて10種類ほどしかなく、そのうちの1種類がこの「フライス盤」です。主に金属を削る際に使用され、水平や垂直の面を削ったり穴をあけたりする加工を得意とし、ミクロン単位での加工精度と長寿命を売りにした山崎技研の製品は、国内でNO.1のシェア率を誇るそうです。
 
●水産事業に乗り出したきっかけ
これまで機械メーカーとして発展をしていった山崎技研ですが、創業者自身が環境問題への意識が非常に高かったそうです。
自然を犠牲にして自分たちの生活だけが便利になり豊かになっているということに違和感を持ち、自然保護活動にも熱心だった創業者は、「人間のせいで魚が減った。これからは獲って食べるだけではなく、自分たちで生産して食べることで環境に負荷をかけないようにしなければならない」という発想のもと、1972年 須崎市浦ノ内に養魚場を開設、『水産事業部』をスタートされました。

 
●水産事業部でのお仕事
現在、山崎技研では『養殖用の稚魚』を生産されています。この稚魚生産は【種苗生産】と呼ばれていて、親の魚に卵を産んでもらい、卵から孵化した稚魚を育てて出荷するのが水産事業部での仕事です。山崎技研の種苗生産の特徴について伺いました。
「親となる魚は『DNA解析』を行っています。このDNA解析を行うことで成長や色、形、病気に強いなどの項目を読み取ることができ、そういったより良い遺伝的特性を持った親魚(しんぎょ)を選抜して産卵してもらい稚魚を育てていく「選抜育種」という方法を用いています。よく勘違いされるのですが、当社はDNA操作は行っていません。あくまでもより良い特性を持った親魚を選抜するためにDNA情報を活用しているということです。当社が出荷するマダイ稚魚は、見た目は天然のマダイとほぼ同じですが、天然のマダイと比較して約1.5倍ほど早く成長します。」

 
現在、山崎技研では『マダイ』『シマアジ』『ブリ』の3魚種を販売用の稚魚として生産していますが、創業者の想いのもと稚魚の放流事業にも力を入れており、『グレ』『クロダイ』『イサキ』などを浦ノ内湾や高知市の浦戸湾、大月町などで放流を行っています。この放流事業は完全ボランティアで行われているというので驚きです…!
 
●水産事業部それぞれの部署の役割
水産事業部には『陸上生産』『海上生産』『営業』『研究開発室』の4部署があります。
 
『陸上生産』

 
稚魚は、最初のうちは大きな水槽から育成がスタートするそうで、水槽での生産管理をしているのが『陸上生産』という部署の仕事。生まれた稚魚はマダイで約45日間、大きな水槽で育てられます。
 
『海上生産』

 
水槽で育てられた稚魚はその後沖合に設置された網の中で過ごします。そこでの飼育管理を任されているのが『海上生産』という部署。1水槽で約20~30万匹の稚魚が飼育されているので、大きくなればなるほど水槽の汚れも多くなり、病気にかかるリスクも高くなってしまうほか、養殖業者のほとんどが外海で飼育するため、その耐性をつけさせるためにも海で飼育されます。
 
『営業』

 
出荷やアフターサービスを提供するために動いている部署です。稚魚は一度に数千から数万尾単位で業者に販売されるため、輸送は主に【活魚船】という船を利用し運ばれます。その手配をするのも営業のお仕事です。
「お客様の受入状態や天候によっては出荷や荷下ろしができないので、こちらの都合だけでなく様々なことに気を配りながら調整を行っています。また、商品は生き物ですので足りないからと簡単に追加生産をするということができません。そのため、事前にあらかたの注文を聞き取り、その数に応じた生産をするという方法を取っています。一般的などんどん販路を広げて販売数を伸ばしていくような営業手法とは少し違います。また、出荷先のお客様のもとに伺い販売した稚魚のチェックをし、会社に情報を持ち帰りフィードバックを行い、次の生産に活かすという大切な役目もあります。」
 
『研究開発室』

ここでは、親となる魚のDNA解析を行い、より良い親魚を探すことをされています。それ以外にも、血が濃くなりすぎないようにする系統管理や、魚病診断を行うのもこの部署のお仕事です。
「稚魚を育てている中でもいろいろな病気が水槽内で発生しますし、沖合に出すと尚更病気が出てきます。いかに早くその病気を突き止めて適切な処置をするかが大切です。」
 
●女性も活躍している水産事業部
山崎技研では香美市にある工作機械事業部と併せて135名の従業員が働いており、そのうちの34名が水産事業部に従事されています。水産事業部では女性も活動をしており、研究開発室や陸上生産では女性ならではの目線も生かされています。
「長い方で20~30年働いている方も居ますが、若い世代が多い職場です。風通しは良い会社なので、上下の厳しい縦社会はあまり無いように思います。仕事柄だとは思いますが、生き物相手なので再現性がなかなか難しいんです。同じことを毎年やっていても毎年自然環境は違うし、病気やウイルスの発生や悪さをするプランクトンの増え方も違う。ですので、『今年はこんな工夫をしたらどうでしょうか?』『こういうエサを試してみたらどうでしょうか?』など若手でも自然と意見が出やすい環境と思います。」
 
●山崎技研の稚魚の特徴
山崎技研が出荷している稚魚には必ず【トレーサビリティ(種苗履歴報告書)】が付いています。DNA管理をしていることで出荷する稚魚が『何を食べた』『どんな病気になった』『どんな薬をあげた』ということ以外にも、親の世代の飼育情報も見ることができるそうです。
「海外へ日本の魚を輸出するにも今はトレーサビリティが強く求められており、DNAの解析をして紐づけていくという作業がとても重要になっています。私たちの会社ではもともとトレーサビリティを付けていましたが、消費者の方の意識が変わってきたのが東日本大震災後からです。海洋汚染が発生したことにより特に天然の水産物の安全性について不安感が強く表れました。しかしトレーサビリティが明確であることにより、安心安全という打ち出しを国や生産者も自信を持ってしていくことができます。」
 
●失敗は許されないというプレッシャー
この仕事の大変なところを伺いました。
「一番はやはり生き物相手なのでやり直しがきかないところですね。なによりお客様にしっかりと必要尾数を供給する義務が私たちにはあります。
例えば、マダイの親魚は建物の中で飼育をすることで、簡単にいうと水温と日照時間の調整で春夏秋冬を2倍速で進めています。そのため、天然マダイの産卵は年1回ですが当社では年に2回(春・秋)産卵をさせることができます。
ただ、1匹から採卵できる量や産卵期間はある程度決まっていますので、もし飼育に失敗して全滅させてしまっても、次に採卵できるのは半年後になってしまいます。お客様も注文尾数に合わせて生簀を空けて待っていますので、『ごめんなさい。今年は売れる稚魚はないです。』は通用しません。養殖業者さんにとっては大きく育てて出荷するはずの1年半後や2年後の収入が無くなってしまいます。それに伴って、市場の流通量が減少し、需要と供給のバランスが崩れ価格高騰や全国的な品不足の発生が想像されるため、【失敗は絶対に許されない】というプレッシャーをすごく感じています。

 
また、水槽で稚魚を飼っているときは機械やPCで管理している部分も多くあります。機械トラブルで水温の低下やエサが切れてしまうことなどが起きないように常にメンテナンスすることも必要ですので、魚のことだけでなく機械に関する知識も必要な仕事です。24時間施設は稼働しているので、何かあれば夜中でも対処ができるよう宿直で毎日誰かが在中するようにもしています。稚魚期は1日1日が勝負です。水槽には多い時で20~30万匹の稚魚が居ますので、病気がまん延してしまうとその水槽全てがダメになってしまいます。ピーク時は20基以上の水槽がフル稼働しているので、常に各水槽の状況に気を配りながら緊張感を持って業務にあたっています。」
 

(機械もほぼ自社オリジナルというのも工作機械メーカーならでは)
 
●知らず知らずのうちに家族や友人たちのもとに
生き物を取り扱うという仕事のやりがいについても伺いました!
「この仕事は他の仕事と比べるとワンシーズン毎に魚の評価が出ますので、お客様から『今年の魚はえいね!』と言ってもらえることが何よりのやりがいです。他にも、陸上生産の場合は水槽に卵を入れる時期を少しずらしながら飼育しているので、約3か月ほどで全ての稚魚を沖の生簀に出します。そこでやっと自分の手から離れたということで、プレッシャーから解放された安堵感と同時に、無事に次の部署にバトンタッチできたという達成感がすごくあるそうです。また、他の社員から聞いた話ですが、マダイの場合はお寿司屋さんやスーパーで並んでいる養殖マダイの約4匹に1匹は自分たちの育てた魚であるため、知らず知らずのうちに家族や友人たちが食べていると思うと、人間が生きていく中で一番大切な【食】という所で、自分の仕事は社会にしっかりと貢献しているんだなぁと感じるそうです。」
 
●今井さん自身も子育てのためにUターン
今回、取材にご協力をいただいた今井さんは2014年に滋賀県から高知に帰ってきたUターン者でした!高知県に帰ってきた理由もお伺いしました!
「福岡の大学を卒業しそのまま全国規模の会社に就職しました。都会は色んなお店もあるし便利だし、就職活動する際は高知に帰る気はさらさらなくて高知に帰る選択肢はありませんでした。前職は全国転勤が当たり前で最後は滋賀県に住んでいましたが、子どもが生まれてから特に高知がいかに食と自然の豊かさに恵まれた環境だったかに気が付きました。県外で趣味の釣りをしてみても高知みたいに【ふらっと海に行って適当に投げたらとりあえず何かは釣れる】という暇つぶし的な釣りが全然成立しないんです。他にも、夏に子供を連れて泳ぎに行くとなると、高知だと近くの川にすぐに泳ぎに行けますが、県外では気軽に泳げる川は本当に少なく、海水浴場も人がいっぱい、プールも人がいっぱい、そしてどこに行ってもお金がかかる、カルチャーショックでしたね(笑)子育てをすることを考えたら『高知に帰ってもいいかもね』という話になり、35歳の時に高知に帰ってきました。この会社を知ったのは転職会社を通じてなんですが、会社見学に行ってみたら、凄い面白いことをしているな、こんな会社が高知にあったんだと思い、入社しました。」
 
●最後に!
最後に会社PRをしていただきました!
「私たちの会社はBtoBの会社ということもあり、一般の方にはあまり馴染がないと思いますが、工作機械も養殖用稚魚も日本のものづくりや日本の食文化を支える無くてはならないものです。これからもより良い機械、より良い稚魚を作り続け社会に貢献できるよう頑張っていきたいです。」
 
お忙しい中ご対応いただきありがとうございました!
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